まえがき 絵本だけでなく映画やTV、小説などの物語はワクワクドキドキとともに登場人物達への感情移入で普段では体験できない気持ちを教えてくれるものだと思います。怒りや悲しみなど自ら進んで体験するべきことではないけれど、知っておけば必ずいつか人や自分の役に立つ気持ち、そして優しい気持ちを子どもたちに感じてほしい、伝えたいと思ってこの物語を書きました。読んでくれた子どもたちがカッコイイ大人になることを願って。 黒田 勇樹 |
あとがき はじめてこのお話を勇樹君から受け取ったとき、私がそれまでに抱いていた勇樹君のイメージが、相当偏ったものであったと反省してしまいました。「美青年」を売りにした役柄の多かった彼に対し、容姿端麗な育ちの良いおぼっちゃまには、劣等感や焦燥感といったものなど無縁に違いないと、頭から決めつけてしまっていたのです。 「ガピタンの森」の制作を進めながら、勇樹君とお話ししたり、彼の出演する数多くの作品に接するうちに、彼は何の苦労もないおぼっちゃまなどではなく、人の痛みのわかる、とてもとても深い感情を持ち合わせた青年であることが分かってきました。映画「学校3」の知的障害者トミーを演じる彼の姿は衝撃的なものでしたし、舞台「陽のあたる教室」の聴覚障害者コルトレーン・ホランドの役で迫真の演技を観てからは、彼の表面しか見ていなかった私の心の浅はかさを、とても恥ずかしく思ったものです。 この作品では、大好きだった憩いの場から、小鳥達の生命の源を奪ってしまい、取り返しの付かないことをしてしまったと、ガピタンが途方に暮れたところからが、物語の核心です。自分の行動を振り返って反省し、長い年月と多大な精力を費やして広場を元通りにしようとしたガピタンに対して、私は強いいとおしさを抱くまでになりました。 私には、気管支拡張症や喘息等の呼吸器系統の持病があり、いつでも健康な人たちと同じように行動できるわけではありません。病気ゆえに声を出すことすら出来ず、周囲の人々の誤解や冷淡な態度に堪えられず、度々繰り返す入院生活の中で生きていく希望すら失いそうになったこともあるほどです。思うように生活できないことに苛立ちをおぼえ、隣人に八つ当たりしてしまったこともしばしばです。そんな弱さを抱えた自分が経験してきた心の葛藤と、ガピタンの心情との間に、非常に似通ったものを見出すことができたからこそ、自分とガピタンとをオーバーラップさせ、ガピタンの感情に入り込んで絵を描いていくことができたのだと思っています。 最後にオルゴールとなったガピタンは、「自分と他人とを比較して、落ち込んだり悲しんだりする必要なんかないんだよ!」また、「いつでもやり直すことは出来るんだ。そのためにどんなに時間がかかっても、努力は必ず報われるんだ!」と唄っているように感じています。そして、このような歌を唄っているガピタンとは、勇樹君そのものなのではないかしらと、この絵本を描き上げた今、改めて感じています。 夢ら丘 実果 私と同じ喘息の方々やご家族のみなさん、そして健康な方々にもとても役に立つ清水 巍Dr.のHPをご紹介します。 http://homepage1.nifty.com/zensoku/ |